北國新聞 2014年12月10日 掲載

広めよう加賀料理 (36)すしどころ 新ネタも挑戦、誘客の武器に 新幹線時代へブランド化

車の上に「大トロ」のレプリカを載せた「すしタクシー」=金沢市内

金沢では一風変わったタクシーが走っている。車両のてっぺんに「大トロ」2貫のレプリカを乗せた、その名も「金澤寿司(すし)タクシー」だ。すしどころをPRするのに十分なインパクトである。

支出額トップ

独自の寿司検定に合格した「寿司マイスター」の運転手が、客の要望に応じて、おすすめのすし店に案内する。運行しているのは、金沢市のタクシー会社オリエンタル。金沢市は1世帯当たりのすし支出額が全国トップクラスであることに着目して、2年前に導入した。

同社によると、県外からの観光客の多くが、昼食や夕食で、すし店への案内を希望する。担当者は「金沢といえばすし。すしを楽しみに訪れた観光客に楽しい旅を提供したいと思った」と狙いを語る。もっとも、乗るのに勇気がいるのか、今のところ予約は少なめだそうだ。

すしタクシーの利用拡大は今後に期待するとして、すしは、日本人の好きな食べ物として不動の人気を誇る。おいしいすしが提供できることは、誘客の大きな武器だ。北陸新幹線金沢開業に向け、業界では地元のすしをブランド化する動きが活発になっている。

富山県鮨(すし)商生活衛生同業組合は2011年から、四季折々の富山湾のネタで握る「富山湾鮨」を、県とタッグを組んで売り出している。七尾市観光協会は「すし王国能登七尾」と銘打ち、年間を通じて新鮮な魚を味わえることをアピール。石川県鮨商生活衛生同業組合も昨年から「百万石の鮨」を企画し、JRや旅行会社にすしをテーマにした旅行を提案している。

石川県鮨商生活衛生同業組合が提供している「百万石の鮨」=金沢市の「千取寿し」

親父の一貫

同組合の吉田勝昭理事長が営む金沢市石引1丁目の「千取寿し」で、「百万石の鮨」を出してもらった。10貫で3800円。回転ずしに比べて「お高い」イメージがある敷居を下げ、若者や女性など新たな客層を掘り起こそうと企画し、現在は加盟の28店で提供しているという。

甘エビ、白身のアラ、ブリなど新鮮なネタが並び、珍しいものでは「ブリの漬け」があった。「マグロの漬けはあるけど、ブリもおいしいやろ。北陸らしいしね」と吉田さんは誇らしげだ。10貫のうち1貫は「親父(おやじ)の一貫」として、各店こだわりの一品を出す。この日は焼き白子の軍艦。冬グルメの代表格だ。

県外客が求めるのは、やはり地物である。石川県内の店では最近、客の要望に応じて、カワハギやオコゼなど「昔はおつゆにしていた魚」を握ることもあるそうだ。「当たり前になっていて気付かない地元の宝を勉強することも大切」と吉田さんは新幹線時代を見据える。

東京から2時間半で結ばれれば「北陸へ、ぱっと寿司食べに行こう」という人も出てくるだろう。太平洋側の人々をうならせる日本海の幸。格好の観光資源は、仕掛け次第で、大きな流れを呼びそうだ。(森田奈々)

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